2012/11/26
12:57:06

昨日に引き続き、2012年11月18日の日経ヴェリタスのコラムをご紹介します。
東京大学の植田和男教授によるもので、『円高は「異常な」水準なのか』というタイトルの記事です。
ここ数年かつてない円高水準で、そのために製造業が大きな打撃を受けていて日本経済がマイナス成長になって、デフレからの脱却もできないという意見が多いと思います。植田氏は理解は示しながらも、少し別の視点から問題提起をしています。
『最近の日本に関係のある現象としては、発展途上国の製品の一部が日本製品と遜色ない品質のものとなり、これまでと同じ価格では日本製品が売れなくなる。
あるいは、消費者物価では捉えられないコストの増大の動き、例えば、大震災後のエネルギー価格上昇が日本企業に甚大な影響を与えているといったことがある。
これらの場合には、円安によって日本企業の価格競争力が上昇し、全体としての競争力が元に戻るのが1つのあり方である。
しかし、円高が続き、製造業の海外進出が加速し、結果として人口減少が続く国内での労働需給が長期的に均衡するという考え方もあるだろう。以上のような観点からの円高議論がもっと盛んになることを期待したい』
確かに、現在は数年前から比較すると円高になっているということが言えます。
ただし、それが1995年当時の円高と比較すると実行レートでは”円高ではない”というエコノミストもいます。
それはこの日本がバブル崩壊以降デフレが続いているために物価が安くなり、それに対して外国は多少なりともインフレ傾向でその差は以前と比較すると小さいということのようです。
では、今後の円のレートはどうなっていくのか?
ブログでも何度か紹介している藤巻氏のように日本の債務問題がクローズアップされて、かなりの円安になるだろうと予想している人もいる一方、副島隆彦氏、浜 矩子氏や榊原英資氏のようにドルが基軸通貨から脱落し、米国の国力が落ちていく過程で、1ドル=50円、60円という水準になると予想しているエコノミストもいます。
どちらが正解になるのかは、今後10年程度経過しないと分からないでしょうけれど、我々ができることは”どちらのシナリオとなっても対処できる体制”を構築しておくことだと思います。
つまり、今まで日本人の外貨・外国資産保有率からすると圧倒的に米ドル(米ドル建て)が多かった訳ですが、今後は米ドルの割合を減らしていくという選択肢が必要だと思っています。
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