2012/12/10
12:38:40
日経新聞ネットに興味深い記事が出ていましたのでご紹介します。
ポールソン氏のファンドが苦境に陥っているという記事です。
やはり、既に旬は過ぎ去ったのか、もう一度栄光を取り戻すのか?
『米著名投資家ジョン・ポールソン氏が12月初旬、ニューヨーク市内で投資家向けの年次会合を開いた。運用成績が劇的に悪化した昨年の苦しい経験を経て、復活を期した今年。明るい話を提供したかっただろうが、現実は厳しかった。
「欧州市場への目算を誤り、損失を出した」。ポールソン氏は、顧客にこんな話をしたという。
さかのぼること5カ月前の7月。ポールソン氏は投資家向けの電話会議でこう語っていた。「ユーロが崩壊する確率は50%」――。
今年の春ごろから、ギリシャからスペインに波及した欧州の債務問題が深刻な事態を引き起こすと読み、欧州国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を積極的に購入してきた。
国債価格が下落(金利は上昇)するほど、債務不履行リスクを取引するCDS価格は上昇する。米国で金融危機が起きた時に住宅ローン担保証券のCDSを大量に購入していたのと同じ戦略だ。
2007年当時は米住宅バブルの崩壊で巨額の利益を得たが、今回は思惑が外れた。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「ユーロ防衛のために何でもする。私を信じてほしい」と語ったのが7月下旬。8月の理事会ではドイツの反対を押し切り、南欧国債の購入に道を開いた。「ドラギ・マジック」を受けて、欧州市場の不安は沈静化。南欧の国債利回りは低下(価格は上昇)し、株価も上昇に弾みが付いた。
想定とは逆の値動きとなり、ポールソン氏は苦しい立場に置かれる。結局、欧州市場の混乱に賭ける取引を縮小せざるを得なくなった。旗艦ファンドの1つで、レバレッジを活用した高リスクの「アドバンテージ・プラス・ファンド」。
米メディアによれば、今年の運用利回りは10月末までで約17%のマイナス。
「復活」どころか、さらなる転落を印象づける内容だ。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は最近、米住宅市況の回復でポールソン氏が運用する不動産ファンドの成績が好調と報じた。だが、同ファンドの規模は3億ドル前後と、約200億ドル(約1兆6400億円)とされる運用資産全体からすれば微々たるものだ。
自らの相場観に忠実に、投資が実を結ぶまで徹底して同じポジションにこだわり続ける。短期志向に陥りがちなヘッジファンドが多い中で、ポールソン氏には長期投資の強い信念があった。
住宅バブルの時もそう。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)のCDSが発行されたのは05年夏。それからわずか2週間後に、ポールソン氏は初めてCDSを購入した。その後も思惑に反して住宅価格の上昇は続いたが、逆にポジションを積み上げた。しばらくの間は損失が膨らみ、不安になった投資家は取引を解消するように迫った。
ポールソン氏は機が熟するのをじっと待ち続けた。そして07年。米住宅バブルはついに崩壊の時を迎え、ポールソン氏はこの年だけで約40億ドルの報酬を手にした。
以前のポールソン氏なら、欧州市場に対する弱気な姿勢を今でも維持していたかもしれない。欧州の債務問題は、未曽有の金融緩和で「一時的な小康状態」にある。いつかまた混乱期を迎えれば、住宅バブル崩壊の時のように、投資が実を結ぶ可能性だってある。しかし、ポールソン氏を際立つ存在にしてきた「粘り強さ」は、もはや許されない状況に置かれている。
名声をほしいままにしてきたポールソン氏の1つ目の誤算は「中国」だった。投資先の中国の木材事業会社、嘉漢林業国際(シノフォレスト)で2011年6月に資産水増しの実態が表面化。株価は急落し、ポールソン氏は持ち株の売却で巨額の損失計上を余儀なくされた。
そして2つ目の誤算は、昨年の米金融株への投資だ。米景気の回復の恩恵を受けるとして、安値圏にある米金融大手株に積極投資。米景気は底堅さを見せたものの、欧州問題の高まりや金融規制の強化を嫌気して、金融株は下落が止まらなくなった。
「17年にわたる運用のキャリアで最悪の1年だった。がっかりしているし、申し訳ないと思う」。昨年10月末、顧客に宛てた書簡で素直に謝罪。「このところぐっすり眠れていない」との弱音も吐いた。投資家の圧力の高まりで金融株も放出。皮肉なことに、ポールソン氏が見切りを付けた昨年末から、金融株は急回復の道をたどった。売り時のタイミングは最悪だったといっていい。
中国株での巨額損失、米金融株の失敗、そして今回は欧州問題の行方を読み違えた。立て続けに起きた「3つの誤算」でポールソン氏の評価は急降下した。メディアの注目度は相変わらず高いが、有望なヘッジファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ業界などではあまり話題にのぼることもなくなったと聞く。
ポールソン氏が率いるポールソン・アンド・カンパニーの従業員は50人ほど。最近になって米著名投資家ジョージ・ソロス氏のもとで働いていた複数の人物を雇い入れたとの情報がある。運用資産は200億ドルと、ファンド業界では超大型の部類に入る。すでに出資している投資家はまだ諦めていないのかもしれない。
稀代のカリスマ投資家が2年越しでつまずいた背景は、リスク要因の先行きを読み解くことが非常に難しい環境下にあったことを物語る。3度の失敗を経て、2013年こそ復活を遂げる1年になるだろうか。』
ポールソン氏のファンドが苦境に陥っているという記事です。
やはり、既に旬は過ぎ去ったのか、もう一度栄光を取り戻すのか?
『米著名投資家ジョン・ポールソン氏が12月初旬、ニューヨーク市内で投資家向けの年次会合を開いた。運用成績が劇的に悪化した昨年の苦しい経験を経て、復活を期した今年。明るい話を提供したかっただろうが、現実は厳しかった。
「欧州市場への目算を誤り、損失を出した」。ポールソン氏は、顧客にこんな話をしたという。
さかのぼること5カ月前の7月。ポールソン氏は投資家向けの電話会議でこう語っていた。「ユーロが崩壊する確率は50%」――。
今年の春ごろから、ギリシャからスペインに波及した欧州の債務問題が深刻な事態を引き起こすと読み、欧州国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を積極的に購入してきた。
国債価格が下落(金利は上昇)するほど、債務不履行リスクを取引するCDS価格は上昇する。米国で金融危機が起きた時に住宅ローン担保証券のCDSを大量に購入していたのと同じ戦略だ。
2007年当時は米住宅バブルの崩壊で巨額の利益を得たが、今回は思惑が外れた。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「ユーロ防衛のために何でもする。私を信じてほしい」と語ったのが7月下旬。8月の理事会ではドイツの反対を押し切り、南欧国債の購入に道を開いた。「ドラギ・マジック」を受けて、欧州市場の不安は沈静化。南欧の国債利回りは低下(価格は上昇)し、株価も上昇に弾みが付いた。
想定とは逆の値動きとなり、ポールソン氏は苦しい立場に置かれる。結局、欧州市場の混乱に賭ける取引を縮小せざるを得なくなった。旗艦ファンドの1つで、レバレッジを活用した高リスクの「アドバンテージ・プラス・ファンド」。
米メディアによれば、今年の運用利回りは10月末までで約17%のマイナス。
「復活」どころか、さらなる転落を印象づける内容だ。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は最近、米住宅市況の回復でポールソン氏が運用する不動産ファンドの成績が好調と報じた。だが、同ファンドの規模は3億ドル前後と、約200億ドル(約1兆6400億円)とされる運用資産全体からすれば微々たるものだ。
自らの相場観に忠実に、投資が実を結ぶまで徹底して同じポジションにこだわり続ける。短期志向に陥りがちなヘッジファンドが多い中で、ポールソン氏には長期投資の強い信念があった。
住宅バブルの時もそう。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)のCDSが発行されたのは05年夏。それからわずか2週間後に、ポールソン氏は初めてCDSを購入した。その後も思惑に反して住宅価格の上昇は続いたが、逆にポジションを積み上げた。しばらくの間は損失が膨らみ、不安になった投資家は取引を解消するように迫った。
ポールソン氏は機が熟するのをじっと待ち続けた。そして07年。米住宅バブルはついに崩壊の時を迎え、ポールソン氏はこの年だけで約40億ドルの報酬を手にした。
以前のポールソン氏なら、欧州市場に対する弱気な姿勢を今でも維持していたかもしれない。欧州の債務問題は、未曽有の金融緩和で「一時的な小康状態」にある。いつかまた混乱期を迎えれば、住宅バブル崩壊の時のように、投資が実を結ぶ可能性だってある。しかし、ポールソン氏を際立つ存在にしてきた「粘り強さ」は、もはや許されない状況に置かれている。
名声をほしいままにしてきたポールソン氏の1つ目の誤算は「中国」だった。投資先の中国の木材事業会社、嘉漢林業国際(シノフォレスト)で2011年6月に資産水増しの実態が表面化。株価は急落し、ポールソン氏は持ち株の売却で巨額の損失計上を余儀なくされた。
そして2つ目の誤算は、昨年の米金融株への投資だ。米景気の回復の恩恵を受けるとして、安値圏にある米金融大手株に積極投資。米景気は底堅さを見せたものの、欧州問題の高まりや金融規制の強化を嫌気して、金融株は下落が止まらなくなった。
「17年にわたる運用のキャリアで最悪の1年だった。がっかりしているし、申し訳ないと思う」。昨年10月末、顧客に宛てた書簡で素直に謝罪。「このところぐっすり眠れていない」との弱音も吐いた。投資家の圧力の高まりで金融株も放出。皮肉なことに、ポールソン氏が見切りを付けた昨年末から、金融株は急回復の道をたどった。売り時のタイミングは最悪だったといっていい。
中国株での巨額損失、米金融株の失敗、そして今回は欧州問題の行方を読み違えた。立て続けに起きた「3つの誤算」でポールソン氏の評価は急降下した。メディアの注目度は相変わらず高いが、有望なヘッジファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ業界などではあまり話題にのぼることもなくなったと聞く。
ポールソン氏が率いるポールソン・アンド・カンパニーの従業員は50人ほど。最近になって米著名投資家ジョージ・ソロス氏のもとで働いていた複数の人物を雇い入れたとの情報がある。運用資産は200億ドルと、ファンド業界では超大型の部類に入る。すでに出資している投資家はまだ諦めていないのかもしれない。
稀代のカリスマ投資家が2年越しでつまずいた背景は、リスク要因の先行きを読み解くことが非常に難しい環境下にあったことを物語る。3度の失敗を経て、2013年こそ復活を遂げる1年になるだろうか。』
スポンサーサイト