2014/08/28
12:42:17

増田悦佐氏の著書である「夢の国から悪夢の国へ」という本を読みました。
サブタイトルに、「40年間続いたアメリカンバブルの大崩壊」とありますように、日本のことではなく米国の現状を赤裸々に描いたものです。
本は430ページ以上ありますので、詳細をご紹介するのはなかなか大変なのですが、氏が「おわりに」で書いている文章が、読んだ自分としてサマリーを表していると思いましたので、ご紹介してみたいと思います。
『アメリカはほんとうにひどい社会になってしまった。慢性化するインフレの中で、一流企業、大手金融機関、国や大きな自治体といった知的エリートの大部分に職場を提供している企業や機関ばかりが濡れ手に粟のぼろ儲けをし、一般大衆はどんどん貧しくなる。
黒人、ヒスパニックの人たちは、安定した家庭に生まれ育つ人たちのほうが少数派というほど家族の崩壊が進んでいる。そして、黒人やヒスパニックばかりではなく、貧しい白人家庭の子女も含めて、治安も悪くすさんだ大都市の公立小中学校に行くしかなかった子供たちは、四大卒の資格を取ることさえ困難で、一生学歴で不利な立場に立たされる。あこぎに授業料値上げをくり返す大学や、絶対に免責できない仕組みの学費ローンを提供する金融機関が、こうした貧乏人を食いものにしている。
「国民皆保険だけは避けなければならない」というイデオロギー的な理由で、ありとあらゆる医療サービスがべらぼうに割高になっている。そのため、アメリカ国民の7人にひとりが年間、ただの1セントも医療費を使えないほど困窮した状態に放置されている。
もう十分すぎるほど豊かなアメリカの農家を支援するために、アメリカの社会保障の根幹に、食費以外の用途には使えない疑似マネーが据えられている。そのため、アメリカ国民は金額ベースでは世界最大の医療サービス消費をしているにもかかわらず、先進諸国のなかで比べると病的肥満症患者の対人口比率が断トツであり、平均寿命では下から数えた方が早いというコストパフォーマンスの悪さを示している。
アメリカを世界最大の経済にのし上がらせた原油と自動車に依存した社会は、若い人たちのあいだで自由に動き回るためのガソリンが買えないほど貧しい人が増えているという理由で、利点ではなくハンデに変わりつつある。
そして、アメリカの知的エリートたちは、どうやら今でも本音では「比較的低コストで長続きする戦争を1回やれば、戦時インフレ景気によって、アメリカ経済はたちまち回復する」と考えているらしい。それにしても、この戦争指向というやつは、愚劣な妄想と切って捨てるにはあまりにも実現してしまったときの被害が甚大すぎる。
そういう危険きわまる「政策」に、頼まれもしないのに自分から乗って「今度やるときは、絶対に実戦部隊に参加させてね」と頼みこんでいる、戦争ごっこの大好きな幼児的キャラを首相に戴いた某経済大国も存在することだ。
アメリカが、この最悪の道をとらず、何とか戦争なしで平和に世界経済の覇権国家の座を降りてくれることを祈りたい。』
この本を読み終えた率直な感想は、「現在のアメリカのようになってはいけない」ということでした。
大会社とその幹部がロビー活動により、自分たちに有利な法案を通すことで、一部の人たちだけがさらに儲かるような社会になってしまったと言えます。
しかもそのおこぼれは、一般の人にはほとんど来ないのです。
一昔前であれば、アメリカンドリームという言葉がありましたが、今では貧乏な家庭に生まれた人は、努力によってそこから抜け出すことさえも困難な社会になりつつあるようです。大学業界では年率で7〜8%にもなる値上げを毎年くり返しているので、貧乏な家庭の人には教育を受けることさえも困難になりつつあるのです。
現在のアメリカの姿をきちんと分析することで、日本も同じ方向を目指すのではなく、日本独自の方向を目指すきっかけになればと思っています。
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