2014/09/03
12:15:01

野村證券チーフ為替ストラテジストである池田雄之輔の著書、『円安シナリオの落とし穴』を読みました。本日はサマリーを書いてみようと思っています。
同書の中で為替相場、とりわけドル円相場がどのように動くのかを解説しています。相場の担い手を(1)投機(ヘッジファンド)、(2)貿易などの円需給、(3)日米金利差、という3つに分けています。
(1)は短期的な動き、(2)(3)は中長期的な流れを作り出すとのことです。
2012年11月から13年5月にかけて、アベノミクスによる日本株上昇、円安はヘッジファンド勢により作り出されたと解説しており、1ドル=100円付近で達成感が国内にも出ており、政府・日銀がさらなる円安を志向して政策を連発してくる雰囲気が感じられないことから、ヘッジファンドが飛びつき、彼らが作り上げた「アベノミクス」の饗宴相場は終了したと見ているようです。
そうなると今後の展開は残る2つに左右されるということになります。
(2)の貿易などの円需給の主なものは、貿易収支と投信フロー(投資信託経由の外貨買い)であると指摘しています。
貿易黒字が大きく、稼いだ外貨を元にした円買い需要が強い時には、逆に個人投資家の外貨投資意欲も旺盛で、それを打ち消すように円売りの力になる、という関係のようです。
日本の貿易収支は向こう数年間赤字となり、円売り超過の状態が続くために、先行きの円安基調をもたらすもっとも重要な要素になると書いています。また、外貨建て投資の残高も成長し続けており、長い目で見ると安定した円売り主体となっていることも指摘しています。
(2)の要素は、現時点では「一方通行」の円売りになっているようです。貿易収支としては、2017年から入ってくる安価な米国シェールガスの効果で、どのくらい貿易赤字が解消できるのかということになりそうです。
さて、話は(3)の日米金利差となります。
『日本円のように0%に近いところまで金利が下がっている通貨は、借り入れコストの安さが魅力となり、いわゆる「キャリー通貨」になることもある。円キャリーであれば、円で資金を調達し、そこから他の通貨・資産に投資をするのである。この場合、円を売却して他通貨を買うことになるため、円安圧力が発生する』
『ドル円の場合は、日本の金利があまり動かないだけに、米国の金利が上がれば円安、米金利が下がれば円高という関係が成立しやすい』
氏は様々にある金利の中で「2年もの国債利回り格差(ドル円の場合)」がもっとも相関を表していると述べています。
ユーロ・ドル相場は、米独それぞれの「5年もの国債利回り格差」を用いると長期に渡り、きれいな連動性が確認できるようです。
この本は2013年12月に出版されたものですが、この中で向こう2年間の円相場を予想しています。
氏が指摘する「5つの円需給」のうち、所得収支(配当金・金利収入)は円買い超過が予想できるようですが、それ以外の4つ(貿易・サービス収支、対外直接投資、投信フロー、生保フロー)は円売り超過の継続を予想しています。
上記を踏まえたシュミレーションによりますと10兆円規模の「一方通行」の円売りの継続で、年間5〜8円の円安要因と見ています。
さらに、日米金利差も米国が金利を上げてくると予想でき、これも円安要因なわけです。
円需給の偏り(上記の10兆円)で5〜8円程度、日米金利差によって2〜3円程度、合計で年間7〜11円ずつの円安を見込むのが妥当だと述べています。
今後のドル円相場を、2014年末で1ドル=110円、2015年末には1ドル=116円と見ているようです。それ以降は、日本の貿易収支がどのように変化してくるのかで、変わってくると解説しています。
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