2015/11/13
12:25:15

中原圭介氏の著著「石油とマネーの新・世界覇権図」を読みましたので、いつものようにまとめを書いておこうと思います。
タイトルにもありますように、石油をベースに今後の世界を予想した本です。
中原氏は2013年の著書「シェール革命後の世界勢力図」で、以下のように予想していたようです。
1)アメリカが世界最大の資源大国になる
2)エネルギー価格の下落が始まる
3)アメリカ経済は順調に回復する
4)穀物など商品価格全体が下落トレンドに入る
5)ロシアの凋落が始まる
6)中東で治安が悪化し、政変リスクが高まる
7)ブラジル経済が危機を迎える
8)インド経済が追い風を受ける
9)中国経済の急成長が終わる
10)新たな新興国としてASEAN諸国が注目を集める
11)欧州経済の復活は遅れる
これらを振り返ってみて、おおむね的中したと言及しています。
さてここからが本題になります。今後の世界ですが、アメリカとイランの和解で、世界情勢は大きく変わるとしています。イランの制裁解除は、原油供給増という意味から、シェール革命並みのインパクトがあると指摘しています。
シェール革命で原油価格が下がることで、エネルギー価格が下落し、それにより生産コストも下がり、穀物や商品価格にも影響を及ぼしています。
また、QE3を打ち切ったことでマネーが逆流したことも、コモディティ下落の原因になっていると述べています。
そして、イランの制裁解除により、イラン原油が順調に輸出されるようなら、さらなる価格下落圧力が掛かるというわけです。イランの制裁解除の狙いは、中国に対抗するためだというのが氏の意見です。
また、こうした原油価格下落時にOPECが減産を決められなかったことも、価格下落に影響を及ぼしています。これには世界の石油市場へのOPECの影響力低下を防ぐためという見方もあるようです。
そうしている間にもシェールオイルの採掘コストが下がってきており、産出量の多いバッケン地方では、大半の油井が40ドルを下回っており、30ドルを下回っている油井も少なくないようです。それを考慮しますと、今後はもう1バレル=100ドルはないというのが氏の見解です。
上記のような背景を考えますと、新興国経済に与えるダメージが大きいのではないかととも述べています。資源価格の下落でロシア経済が失速し、中国とロシアの立場が逆転したとも書かれており、これをうまく生かせれば日本もロシアへの影響力を持ち、安価な天然ガスなどの輸入が出来るかもしれません。
現在のプーチン政権は高い支持率を誇っているようですが、中原氏はいつ倒れてもおかしくないと予想しているようです。
さらに、原油産出コストの高い中南米の産油国も、財政が苦しくなってくるだろうと言及しています。これらの国は他にたいした産業がないためです。
中国についてですが、あらゆる国際機関が「アメリカを抜いてGDP世界一」を予想していますが、中原氏の予想はそれとは逆で、過剰設備投資や粉飾された統計などから、以前のような高い成長率を維持できなく、そうしたことは起こらないとしています。
一方、インド経済ですが、原油安による好影響があり、プラスの要因が多いとも述べています。インフラと行政手続、税務や労務の問題が解決されるようなら、インド経済の大きな発展が期待できると予想しています。