2016/01/06
12:14:20

元慶応大学医学部放射線科 近藤誠氏の著書『日本は世界一の「医療被曝」大国』を読みましたので、まとめを書いてみようと思います。氏は2014年に定年退職し、現在は近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来を運営しているそうです。
この本では、いままで患者も、医師もあまり焦点を当ててこなかった「医療被曝」について取り上げています。
2004年に英国・医学雑誌「ランセット」にオックスフォード大学のベリントン博士らの「診断用X線による発がんリスク」という論文が掲載されたとのことです。
この論文で博士らは、診断用X線による日本人の発がんリスク、世界で群を抜いて高いと指摘しており、その原因は、日本のX線検査件数が世界でも飛び抜け多いことに加え、CTの設置台数も人口あたりの比較で、他の14カ国の平均より3.7倍多いためだとしています。つまり、”検査もがんの原因の1つだ”というわけです。
2000年の時点で、世界のCTの半分程度が日本にある異常な状況で、CTを導入した病院では、導入費用をペイするため、積極的に利用しようという姿勢があります。それ加え、患者側もCTで検査をして欲しいという希望も多く、それにより医療被曝はますます増えていくというのです。
特に大きな問題は、小児でも大人と同じ撮影条件(線量など)で照射している病院が多く、これにより小児の被爆リスクも増大していると警告しています。
医学雑誌「ランセット」に載った英ニューカッスル大・カナダ・米国の共同チームの論文(2012年)によりますと、「CT検査を数回受けた子供は、後に脳腫瘍や白血病を発症するリスクが数倍になる」のことです。
日本でも、小児におけるCTのガイドラインが2005年に発表されたようですが、現状は変わらず、撮影条件の適正化はなおざりにされたままだと指摘しています。
また、乳がん検診で行われるマンモグラフィに関しても、ニューイングランド・ジャーナルオブ・メディシンに掲載された米国での疫学調査結果から、「マンモグラフィ検査は推奨しない」と結論づけていると紹介しています。
マンモグラフィ検診は、胃がん検診や肺がん検診と同じく、早期がんを発見することにより、命取りになる転移性がんの発生を減らすことが目的です。ところが、この調査では、発見する乳がんを2倍に増やしても、転移性乳がんの発生は減らず、検診が無意味であることが示されたのです。そのうえ、検診には害があります。
検診の害作用の最大のものは、発見しなくともよいがんを発見され、手術されたり、抗がん剤を打たれたりしていることだと指摘しています。
こうした調査結果を受けて、米国予防医学専門委員会は2009年に、「40才台の女性に対しては、マンモグラフィを用いた定期的な乳がん検診を推奨しない」としたのです。また、スイスの医療委員会も「マンモグラフィ検診は死亡率を低下させない」「治療しなくてもいいがんを発見してしまう」として、マンモグラフィ検診の廃止を勧告しました。
一方、日本ではこうした疫学調査が行われておらず、マンモグラフィ検診の有効性についての検証もなく、マンモグラフィ検診が行われ続けているのが実情です。
これでは誰のための検診なのか?・・となります。
こうした状況を学習するにつれ、健康診断・人間ドックの有効性を疑うようになってきました。そこで、昨年より健康診断や人間ドックの受診を中止しました。
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