2016/04/17
12:01:10

リチャード・クー氏の著書「バランスシート不況下の世界経済」を読みましたので、まとめを書いてみようと思っています。
この本に出会うきっかけは、先日ご紹介しました若林栄四氏の「世界経済の破断界」で、世界不況の原因をクー氏が著書で的確に表現していると書かれていたので、興味を持ったものです。
読んでみますと、「バブル崩壊後、なぜ日本が不況から立ち直れなかったのか?」が分かりました。データも用い説明されており、一度読まれると、そうだったのかと納得できると思います。皆さんにオススメの本です。
はっきり言って、日銀も安倍総理も現状への理解が足りないと思いました。
まず、日本の問題ですが、今回の不況の原因はバブル崩壊です。バブル崩壊で1500兆円の富を破壊し、それが多くの企業に痛手となり、借金を返済しなければバランスシートの改善ができないという状況に追い込まれたのです。
もちろん、個人も大きな損失を被っているわけで、個人と企業がバランスシートを改善するために、借金返済に回りました。
こうなるとお金を使う人がいなくなりますので、普通はGDPがどんどん縮小していくわけです。ところが、日本はバブル崩壊後も、GDPがバブルのピークを下回らなかったのです。それは政府が財政出動をして、お金を使ったためだということです。政府による財政出動がなければ、日本のGDPは数分の一になっていてもおかしくなかったと解説しています。
政府が財政出動をあれだけ増やしたからこそ、ゼロ成長で済み、国民の生活水準が急激に落ち込むことが回避されたと解説しています。われわれはこうした事実を正しく評価してこなかったことを反省するべきだと思いました。
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1996年には日本はG7で最高の実質GDP4.4%の成長率を記録していました。
それまでは、経済の好転を信じて何とか頑張っていたのです。ところが、1997年に橋本政権が財政赤字を削減しようとしたため、経済がデフレスパイラルに落ち、二番底となり、失業問題も銀行問題も一気に深刻化したというわけです。
日本の企業はバブル崩壊後も1997年間の7年間は首切りを控えてきたこともあり、失業率も3%台を保っていたのですが、二番底が起きた後は雇用にも手をつけざるをえなくなってしまいました。
また、銀行問題も1997年以前は二信組問題や住専など部分的なものに限られていたものが、1997年には三洋証券や北海道拓殖銀行、山一證券の破綻から全国的な銀行の貸し渋りへと金融危機が瞬く間に急拡大したというわけです。
つまり、1997年に財政再建に走っていなければ、その後の財政赤字はもっと少ないと思われます。経済がバランスシート不況に陥っている時の財政再建は、財政赤字と景気がさらに悪化してしまうというという悪い例になっています。これまで経済学にバランスシート不況という概念自体がなかったことが、ここまで景気が悪化した原因でもあるというわけです。
『多くの市場参加者が、自分たちが大学で習った「中央銀行がマネタリーベースを増やせば、やがてマネーサプライも同様に伸びる」という関係が今でも成立していると思っていると思われるが、この関係は民間が利益の最大化に向かっている通常の経済では正しいが、民間が債務の最小化に走るバランスシート不況下ではまったく成立しないということに多くの人が気がついていないのである。
そのため、量的緩和という政策がバランスシート不況下で効かないのである。』
『このバランスシート不況下で国債の利回りが下がるという現象は、同不況に陥った経済の持つ自動復元メカニズムのきわめて重要な部分である。つまり、同不況下で民間の未借貯蓄が国債市場に回り、国債の利回りを下げることは、政府が財政出動に走ることへの大きな支援材料になる。
これを受けた政府が財政出動に走れば、GDPは維持でき、それで所得が確保された民間は、その分速くバランスシートの修復を進めることができる。それで、民間のバランスシートが修復され彼らが再びお金を借りるようになれば、その次は政府が財政再建で自らのバランスシート修復を進めるというのがこの自動復元機能の全貌なのである。』 (続く)
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