2016/06/23
12:11:53

安達誠司氏の著書「中国経済はどこまで崩壊するのか」を読みましたので、いつものようにまとめを書いておこうと思います。
1980年以降、世界のどこかで「バブル」が発生し、やがてそれが崩壊、次の「バブル」が別の地域で発生し、それが崩壊するというサイクルを繰り返してきたと述べています。そして、そのサイクルがいよいよ新興国バブル崩壊の局面に到達しつつあるのが、昨今の状況ではないかと見ているようです。
ほぼ、5年に一度こうした「バブルリレー」は繰り返されており、現在、「バブルリレー」のバトンは中国が保有してるというのが氏の見解です。
これから中国で起きるであろう経済の混乱は、たんなる「バブル崩壊」では済まされないのではないか、とも指摘しています。その理由は、現時点までの中国経済の状況をみるかぎり、政策当局が正しい政策運営を行っているように見えないからだと述べています。
今後の中国経済について、2〜3年のシナリオについては「現在の中国経済は、高度成長期を終え、いままさに低(安定)成長局面へ移行する時期に位置している」とみています。
また、中長期的なシナリオとしては、下記の3つを挙げています。
1)変動相場制採用により、対外開放路線へ(安定成長シナリオで、平均5%程度の経済成長が実現する)
2)「中所得国の罠」による長期停滞(低成長シナリオで、平均で名目1〜2%程度の経済成長率となる)
3)統制経済の強化と対外強硬路線(経済成長率を語ることに意味がなくなる)
これらの3つのベースラインシナリオのうち、1)が40%、2)が55%、3)が5%程度ではないかとしています。
また、世界経済にとって都合が良いのは、1)のシナリオであり、中国も最終的には「普通の先進国」になれる道が開けるだろうとしています。ただし、資本主義国の方向に舵を切るという1)のシナリオが実現する可能性は、現在の中国共産党政権の政策スタンスをみると難しいのではないかとも述べています。
むしろ、徐々に成長率が減速しながら、2)の道を進んでいくと考える方が、「中所得国の罠」の状況を振り返ると妥当だともしています。1)と2)の分岐点は、5年後に来ると予想しているようです。
一方、3)のシナリオですが、可能性は決して低くないとも述べています。
昨今の南シナ海での中国の動きや尖閣諸島を巡る中国の対応などをみていますと、こうしたシナリオも頭に入れておかなければいけないのかもしれません。
中国の政策当局はなるべく早く人民元の変動相場制への移行し、ある程度の対外開放を実現して、1人あたりのGDPを安定的に増加させ、「中所得国の罠」を回避するのがベストの政策ではないかと提言していますが、中国の政策当局がすんなりと、人民元レートを現在の固定相場制(ターゲットゾーン制)から、変動相場制に移行させることはしないだろうとも予想しています。
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