2016/05/31
09:20:40

榊原英資氏と水野和夫氏の共著「資本主義の終焉、その先の世界」を読みましたので、まとめを書いてみようと思います。この新書は第一部を水野氏が、第二部を榊原氏が担当し、そして第三部を二人の対談で構成しています。
現在の世界不況は、既存のシステム(資本主義)が崩壊に直面しているためだと指摘しています。しかしながら、いまだに新たなシステムの姿が見えない状況であるとも述べています。
今回の危機(不況)において重要なことは、過去の危機のどれよりも深刻だと指摘しています。以前の危機のように、「新大陸」や「植民地」といった「新しい空間」を発見して乗り切ることができないのです。そのため、21世紀は「閉じた空間」を前提として成り立っていた中世を参照するしか解決の道はないのではないかというわけです。
21世紀の現在、新たな空間が見つからないのに、「成長戦略」を何度も繰り出したり、「電子・金融空間」をITテクノロジーで売買回転速度を上げたりして、新しい「空間」を探し求めています。これは意識改革ができなかった「長い16世紀」のスペイン人やイタリア人と同じだとも指摘しています。
現在のIT革命は、成長を促す切り札のように期待されていますが、ITは18〜19世紀の動力革命の延長線上にあって、これまで瞬時に知性を結びつけたり、地球をより小さくしたりすることで成長に貢献してきたのですが、「よりゆっくり、より近くに」の原理とITが指向する方向は真逆であるとも述べています。
IT革命が「長期停滞」の切り札になり得ないのは、「より速く、より遠く」を実現する空間がなくなったいま、ITがこれ以上地球の空間を広げることができないからです。
政府の成長戦略にみられるように経済成長が不可欠であるという立場からすると、人口減社会の日本では一人あたりの生産性向上に期待するしかない状況です。一人あたりの生産性を向上させるには技術革新が必要です。
米スタンフォード大学のチャールズ・I・ジョーンズ教授の分析によりますと「1950年〜1993年のアメリカの経済成長の80%は、過去の知識の応用と、教育および研究へのふんだんな投資の組み合わせにより実現した。」とのことです。
また、「新たなアイデアが生み出されるペースが今の水準にとどまれば、未来の経済成長率が”1%の1/3”の満たない」とも指摘しています。
つまり、ジョーンズ教授の成長率見通しは、技術進歩による労働生産性の寄与率を”ゼロ”と予想しているのです。つまり、われわれは今までのように右肩上がりの社会に期待してはダメで、今後は”現状維持でも十分だ”と思わなければならないということです。
われわれの小さい頃は白黒TVで、エアコンの普及率もまだまだでした。人々は豊かになったら、カラーTVや車、エアコンなどを欲しがったのです。ところが、21世紀の現在、これらの普及率はほぼ100%だと言っても良いと思います。
人々が新たな商品を購入するのは、それらが故障したときではないでしょうか。
つまり、新たな顧客がいなくなっている世界です。
以前のように、どんどん供給されたものが、どんどん消費されるような資本主義が終わりに近づいているというわけです。
現在の資本主義のシステムは中心が作ったもので、そこには必ず周辺が必要です。つまり、富を集める中心に対して、それを集めてくる周辺が必要だというわけです。これは自分の考えですが、資本主義をネズミ講に例えると分かりやすいのかもしれません。
資本主義はいうネズミ講は、最初のころは参加者も少なく、新たな人を入れることで、下位のランクの人にも利益を得られるチャンスは多くあったのです。
それが現在地球上のほぼ全ての人がそこに加わり、新たに加わる人がおらず、崩壊の危機にあるとの理解です。
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